蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・このコースのサラダですが、キュウリは入ってますか?」
「いえ、キュウリは入っておりません」
「そうですか。ではこのコースを二人分、お願いします」
慧は言い、メニューを店員に渡した。
絢乃は昔からキュウリが苦手で、食べることができない。
それ以外の食材は大丈夫なのだが・・・。
いつも絢乃の皿にキュウリがあると、慧がささっと自分の皿へと回収してくれる。
過保護というのか何というのか、そういうところも昔から変わらない。
───思うに。
自分になかなか彼氏ができないのは、慧のせいではないだろうか。
責任転嫁だとわかってはいるが・・・。
『彼氏を作りたいなら、一人暮らしをするべきよ! 家族と一緒の生活が楽しすぎると、彼氏を作る必要性を感じなくなるからね?』
『・・・確かに・・・』
『私も何人か見てきたから知ってるのよ~。今はいいけど、40とかになったら一気に現実が押し寄せるわよ? 親も兄弟も、ずっと一緒に居れるわけじゃないからね?』