蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
いつかの春美の言葉を思い出し、絢乃は内心でため息をついた。
・・・大学2年の時に元彼の祐司と別れてから、もう6年。
ちなみに祐司と別れた理由は、・・・性の不一致だった。
祐司に求められるまま、数回体を重ねてみたものの・・・毎回、受け入れようとすると苦痛を感じ、結局中途半端な交わりしかできなかった。
そんなことを何回か繰り返した結果、『性行為は痛いもの』という先入観が頭に染みついてしまい、絢乃は無意識のうちに性行為を避けるようになった。
そしてそんな絢乃に愛想が尽きたのか、祐司は絢乃の友人だった沙紀と浮気し、結局絢乃と祐司は別れてしまった。
その経験は絢乃の心の奥底で、ひりつくような痛みとともに今でもひっそりと横たわっている。
───自分は不感症なのかもしれないという不安と、そういう女を男はあっさりと捨てるものだという、諦めにも似た不信感。
もちろん絢乃も、そんな男ばかりではないことはわかっている。
けれど6年前の経験は、絢乃の心に深い傷を残した。
6年経っても彼氏ができないのは、その苦い経験もあるからかもしれない。