蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
三章
1.技術者同士の戦い
8月のとある土曜。
───夕刻。
絢乃は自席で、パソコン画面に表示された商品マスタのファイルをじっと見つめていた。
グランツ・ジャパンでは年に4回ほど土曜出勤の日があり、今日はその出勤日だ。
「・・・うーん、やっぱこの構成だとまずいと思うんだけどなー・・・」
絢乃は呟きながら、うーんと頭を捻った。
先月、雅人に提出した設計書は修正が終わり、絢乃はデータベースの修正に取り掛かっていた。
もちろんいきなり本番のデータベースをいじるのではなく、テスト用に用意したデータベースをいじっているのだが・・。
けれど実際に修正を始めると、思っていた動きと違う。
設計書通りに進めるのが技術者としては正しいのだとわかってはいるが・・・。
「・・・もう一回、確認した方がいいかも・・・」
絢乃はノートパソコンを取り上げ、第一開発課の居室へと向かった・・・。