蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「夜間バッチは構成を変えれば大丈夫です! 基幹とのインターフェースを少し遅らせれば・・・」
「それを遅らせるわけにはいかない。その後に基幹系のメイン処理が続いている。ちゃんと構成を見ろ!」
「構成は知ってます! けれどその処理は・・・っ」
絢乃は髪を振り乱し、ドンと机を叩いた。
相手が鬼軍曹だということは、絢乃の脳裏から既に飛んでしまっている。
そして雅人も、絢乃が部下であり後輩であるということは頭から抜けてしまったらしい。
雅人は机を叩いた絢乃をキッと睨み、大声で言った。
「・・・いい加減にしろ、秋月! これは課長としての命令だ!」
「・・・っ」
雅人の言葉に、絢乃はぐっと息を飲んだ。
・・・課長としての、命令・・・。
物流システムに関する全権限は、雅人にある。
システム改変の最終決定権も、雅人にあるのだ。
それを突きつけられたら、絢乃は何も言えない。