蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
<side.雅人>
・・・絢乃が去った後。
雅人は大きなため息をつき、眼鏡を外した。
机に片肘をつき、目元を覆う。
「・・・」
───大人げないことを言ってしまった。
絢乃の言っていることは雅人も理解している。
そして恐らく、絢乃も雅人が言っていることを理解しているだろう。
けれど・・・。
絢乃は自分がこうと思ったら、一歩も引かない部分がある。
それは若さでもあり、技術者としてのプライドでもある。
もちろん絢乃はイチからちゃんと説明すれば、理解するだけの頭脳を持っている。
けれど理解したうえでこうと思ったら、一歩も引かない。
例え相手が誰であっても。