蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
今回は喧嘩のようになってしまったが、それは雅人がちゃんと絢乃に向き合ってくれた証でもある。
絢乃は心に渦巻いていたモヤモヤしたものが、しだいに薄れていくのを感じた。
「・・・あの。さっきはすみませんでした。熱くなってしまって・・・」
と、素直に言った絢乃に。
雅人は片手を伸ばし、絢乃の頭をくしゃっと撫でた。
目を見開いた絢乃に、雅人は目を細めてくすりと笑う。
いつもクールな眼鏡の奥の瞳が、笑みを帯びると優しい印象に変わる。
普段はめったに見ることのないその瞳に、絢乃は吸い込まれるような気がした。
「いや、俺も言い過ぎた。・・・悪かった」
「・・・北條さん・・・」
「あと3日間、時間をやる。じっくり検証してみろ」
雅人の言葉に、絢乃は眉を上げた。
・・・雅人がこう言ってくれるのは珍しい。
絢乃は肩を下ろし、こくりと頷いた。
「・・・はい」
「俺の方でも、もう一度考えておく。・・・それでいいか、秋月?」