蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



今回は喧嘩のようになってしまったが、それは雅人がちゃんと絢乃に向き合ってくれた証でもある。

絢乃は心に渦巻いていたモヤモヤしたものが、しだいに薄れていくのを感じた。


「・・・あの。さっきはすみませんでした。熱くなってしまって・・・」


と、素直に言った絢乃に。

雅人は片手を伸ばし、絢乃の頭をくしゃっと撫でた。

目を見開いた絢乃に、雅人は目を細めてくすりと笑う。

いつもクールな眼鏡の奥の瞳が、笑みを帯びると優しい印象に変わる。

普段はめったに見ることのないその瞳に、絢乃は吸い込まれるような気がした。


「いや、俺も言い過ぎた。・・・悪かった」

「・・・北條さん・・・」

「あと3日間、時間をやる。じっくり検証してみろ」


雅人の言葉に、絢乃は眉を上げた。

・・・雅人がこう言ってくれるのは珍しい。

絢乃は肩を下ろし、こくりと頷いた。


「・・・はい」

「俺の方でも、もう一度考えておく。・・・それでいいか、秋月?」



< 91 / 438 >

この作品をシェア

pagetop