蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
雅人は絢乃の顔を覗き込み、低い声で言う。
・・・響きのよい、バリトンの声。
絢乃を気遣うように見つめる、その眼鏡の奥の涼しげな瞳。
───やはり、雅人はOJTの頃から変わらない。
絢乃はなぜか、胸に熱いものがこみ上げるのを感じた。
それに押されるように、こくり、と頷く。
と、そのとき。
窓の外で、ドーンという大きな音がした。
はっと顔を上げた二人の目に飛び込んできたのは・・・
「・・・花火?」
絢乃は驚き、窓の外を見た。
見ると、海の方でドーンという音とともに花火が打ち上げられている。
音とともに夜空に次々と咲く、色鮮やかな大輪の花。
雅人も驚いたように海の方を見た。
「・・・東京湾花火大会か?」
「あ、多分それですよ! 今朝、ニュースで言ってた気がします!」