蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
3.モラトリアム
30分後。
絢乃は雅人の車の助手席で、手早く慧宛てのメールを打っていた。
あれから湾岸線を通り、花火を見・・・
湾岸線を走りながら見た花火は、東京の夜景と相まり、とても華やかで美しかった。
こんなに綺麗な花火を見たのは久しぶりかもしれない。
「・・・送信、と」
絢乃は送信ボタンを押し、ぱたんと携帯を閉じた。
いつも、慧は21時を過ぎると宮崎平の駅まで迎えに来てくれる。
しかし今日は雅人が家の前まで送ってくれるので、その必要はないとメールを入れた。
「・・・ご家族か?」
「あ、はい。兄が一緒に住んでるので・・・」
「それは初耳だな。お前はどちらかというと、弟か妹がいるような気がしていたが・・・」
雅人は運転しながら、呟くように言う。
絢乃は少し笑った。