恋愛温度(番外編も完結しました)
§Ⅳ ひとりの時間
心の整理
1.心の整理
「どちらに、行かれるのですか?」
人の良さそうな年配の女性が、声をかけてきた。
「あ、はい。軽井沢の知り合いの所に。」
「まあ、同じだわ。私は別荘に行くところなの。
途中までご一緒していただける?」
「あ、はい。」
彼女はニコニコしながら隣に座り、
カバンの中からキャンディを取り出した。
昔からある、元祖ゆるキャラの棒付きキャンディだ。
「よかったらどうぞ?」
赤い着色された、キャンディを差し出して、
「なんか懐かしいでしょ?」
「はい。」
「私が病気になると、よく母が近くの駄菓子屋で買ってきてくれてね。
知ってる?昔は1本10円とかでバラ売りしてたのよ?」
「へえ。そうなんですか。」
「今はこんなに詰まってて150円だったわ。
今の方が安いとかって笑っちゃうわね?有り難さも半減しちゃう。
でも、味は昔のまんまで、
口いっぱいに広がる甘さが、昔を思い出させてくれるの。」
彼女はにっこり笑い薄いセロハンをはがして口に運ぶ。