恋愛温度(番外編も完結しました)
「古い別荘なんて、不動産価値もないかもしれないけど、

 いつまで、放って置いてもしょうがないから、

 片付けて、売りにだそうかと思って。」


「思い出を売ってしまわれるんですか?」


「ええ、娘が、ハワイに住んでいるので、

 日本を離れようと思ってね。

 思い出に囚われてるだけでは心が死んでしまうもの。

 この歳になっても、やっぱり未来を生きたいの。」


クスクス笑いながら。

「英語なんて習ってるのよ。笑っちゃうわよね。」


私は首を横に振りながら、


なんて可愛らしい人だろう。

と思った。

髪に白いものが混じり、目元と口元に

年齢が刻まれていても、

生命の輝きを失っていない。

誰かに愛されていた記憶は

彼女のを構成する細胞全てに生かされているのに違いない。
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