恋愛温度(番外編も完結しました)

「こんな素敵な、しかも手作りなんて、

いいんですか?」


「流石に捨てられるのはかわいそうでしょ?」


「ありがとうございます。

 でも、これを使う日が来ることはないかもしれません。」


阿紗子さんは優しく笑うと、


「まだ若いくせに、人生決め付けないで、

 それに、使ってくれなくてもいいの、

 もらって欲しいのよあなたに。

 心の整理を共にしてくれた友人に。」



「明日、引取り業者と、不動産屋さんが来て、

 ここともお別れね。

 長いあいだ引き止めて付き合わせてしまってごめんなさい。」


「いえ、私もご厚意に甘えてしまって…」


「これ少ないけどバイト代受け取って。」


「いえ、泊めてもらって食事まで頂いてしまって、

 十分です。」


「初めからそのつもりだったからいいのよ。

 たくさんではないのよ、受け取って頂戴。

 お金は邪魔にならないでしょ。」
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