恋愛温度(番外編も完結しました)
「出血は多かったけれど、発見が早かったのと、

 応急処置が良かったので、命に別状はないですよ。

 傷が治れば前と変わらなく過ごせます。それより…

 心配なのは、精神的な理由を取り除いて上げないと

 リストカットは繰り返す場合が多いんです。

 新婚旅行中だそうですね、何か思い当たることは?」

「はい…」

「体の傷は治っても心の傷が治るわけじゃないんです。

 家族の方が支えてあげてください。

 もしよかったら精神科にかかられるなら、

 紹介状をお書きしますよ。」

ろくに私が口を聞かなくても。話はするすると進んでいき、

そこの総合病院の精神科にかかる事になった。

たくさんの管につながって、青白い顔の和司が

白いベッドの上で目を閉じている。

追い詰めたのは私。

そう、あたしはもうずうっと長い間和司を苦しめていたの。

一点の曇りもない人なんて、そう多くいるわけじゃない。

私は和司にそればかり求めていた。

話せなかった嘘は和司の中で燻って、

心を蝕んでいたのかもしれない。









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