恋愛温度(番外編も完結しました)

宿命の糸

6.宿命の糸


「和司があの時の男の子?」


「そうだよ。」


私が後ろを振り返ろうとしたのを、

和司は押し戻した。


「君の家族をバラバラにしてしまった元凶だよ。」



あの時私は2歳だった。

記憶などまるで残ってはいない。

ただ、私の性格を形成するのに

この事故は大きな影を落とした。


この事故のが原因で母は弟を流産した。

たとえ早産だとしても育つ月齢だった。

あの事故さえなければ、無事生まれるはずだった。

女の人は出産すると喪失感というのに襲われるらしいが、

本当に無くしてしまった母は

普通のそれの何倍も激しい喪失感に襲われた。

私はその母の横でそんな母を見つめて育った。



< 232 / 311 >

この作品をシェア

pagetop