夏の日差しと狼のいろ。


 ゴンドラの上に乗った牢屋の中。

 その中に長い水色の髪を垂らし
 うずくまる傷だらけの
 少女が居た。



 虚ろに光る青い瞳は
 虚空を見つめるように、
 何も見ていない。



 首には重そうな鎖をつけ
 牢屋の端に縛られているみたいだ。



 「…あの子…?」



 ツキが放心したように
 見つめていると
 アルが前方から言った。




 「きっと、売られたんです
  でも…確か、そういうのは
  禁止されてるはずですけど…」




 売られた?


 ツキは目を離せず、
 それどころか
 その牢屋へ走って行った。




 「ー、あの」



 ツキは少女に声をかける。


 背後に焦ったようなアルとウルーの
 声を聞きながら。






 少女は答えない。


 何も聞こえていないように
 動かなかった。


 ツキは更にゴンドラに近づき、
 牢屋を揺すった。



 「あのっ、貴女どうしたのー…え?」



 ツキははっと牢屋の端に
 目をやった。



 そこには




  "歌を忘れたカナリア。
    処分予定"



 と書かれている。




 処分……?



 ツキが殴られた気分になるくらいの
 衝撃を受けていた、その時



 「ツキ!後ろ!」


 ウルーの叫び声が聞こえ、
 振り返るとそこには、


 「!!」



 このゴンドラの持ち主らしき
 黒いローブを頭から
 すっぽりかぶった男が居て

 ツキに周りから見えないように
 そっとナイフを突き付けていた。

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