夏の日差しと狼のいろ。
「ツキ!」
ツキはぐったりとして動かない。
荒い息遣いで、額に汗を浮かべている。
ツキの左手と右足には何かに刺されたあとがあった。
ウルーははっとした。
これは―猛毒をもつ蜘蛛のものだ。
2ヶ所も刺されているのでぐずぐすしていたら
ツキは死んでしまうだろう。
同時に大変なことに気がつく。
―解毒剤など、ない。
ウルーは基本、刺されることなどない。
解毒剤は町に行かなければないのだ。
ウルーは迷った。
しかし迷っている暇などないと思い、
ツキを抱き上げるとまず家に向かいローブを着て耳と尻尾を隠した。
ツキはまだ子供なので大丈夫だろう。
そして風のように町に走り出した。
早く、早く。
そんな気持ちだけがウルーを支配した。