夏の日差しと狼のいろ。


 「ウルー…酔ってるの?」



 ツキが見上げながら言うと
 とろんとした目でウルーは答えた。



 「全然酔ってないが」


 そういうウルーはどう見ても
 酔っていた。


 顔が赤く、目がとろんとしてるのが
 完全にそれを肯定していて。




 「あー、…えっと…
  降ろして?」



 抱き抱えられたままでは
 恥ずかしいし、

 酔ったウルーが違う意味で
 "オオカミ"みたいだったから、


 ツキは小さく言った。



 それに賛同して、イクアも叫ぶ。



 「ツキをはなせーッ!
  今日は俺のが先だしな


  首にちゅーしちゃったもんね!」



 イクアは得意げな顔だった。



 同時にウルーがぴくりと
 反応した。




 「…ちゅー?」



 「わ、ウルー!違うのよ?」


 ツキがぱたぱたと手を振り
 否定するがウルーは

 やっぱり聞いてなかった。




 「…物分かりが悪い雄狼だな

  もう一度言う。ツキはー…」



 「…んぅ!?」



 一瞬のウチにウルーは
 ツキにキスをしていた。



 もちろん?唇に…



 イクアはぽかんとしている。

 普段のウルーは
 きっとこんなことはしない、

 そう思っているからだろう。




 「んー…んぅぅ!」


 ツキが口を離そうとするが

 ウルーは逃がすまいとした。



 いつもなら、
 ちょっと触れて、終わり。



 しかし今は
 酔っているせいもあってか


 なかなか離してくれない。






 「…っん…」


 息が、出来なくなってきた。




 (ヤバい…ヤバいよー!)



 顔も体も熱くて
 頭が痺れるみたいにぽんやりと
 してくる。




 イクアの様子を伺う余裕など
 まったくない。






 抱き上げられたまま、
 キスをされて、

 5分くらいたった。




 ツキは完全に酸欠で
 ぐにゃりとしていた。

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