夏の日差しと狼のいろ。




 「ちょっ、ウルーっ!」


 あまりにもウルーがしつこいので
 ツキはウルーの耳をぎゅっと
 引っ張った。



 「!!」


 ウルーはびっくりしたように
 動きを止めて顔をあげる。


 ツキはさらにぎゅうぎゅうと
 耳を上に引っ張った。


 「わ、や、やめてくれ」


 ウルーはバタバタと暴れだし、

 尻尾がボフンと広がって
 逆立っていることから、

 相当びっくりしているのがわかる。



 酔っているせいか、
 ウルーは本当にいつもと
 感じが違った。


 「痛いっていってるでしょ
  ほら、首のとこ
  赤くなっちゃったよ」


 
 片方の手を離し、
 首のところを指差す。


 ウルーは困ったような顔で
 それを見る。

 最近、意思表示を
 できるようになってきたツキは
 ちょっとキツク言っておいた。



 「痛かったのよ、わかった?」


 そう言ってもう一度耳を
 引っ張る。



 「や、め……ぅぅ」


 するとウルーは最終的に、
 抵抗をやめてぐにゃりとなった。



 ちょっとやりすぎたかな?と
 ツキはウルーを見ると


 ウルーはツキの膝に頭をのせて、
 目をつむっていた。





 「ウルー?大丈夫?
  ごめんね」


 「ー…っ」


 無言のままウルーは
 ツキを見上げ、

 ちょっと不機嫌そうに
 耳を動かしながらこっちを見た。



 ウルーの耳は髪と一緒で
 銀色で綺麗。


 ツキは今まで触ったことが
 まったくなかった。



 「ウルーは耳触られるの、
  嫌なんだね」


 ツキが笑うと、
 ウルーはふんと鼻をならす。


 「別に、嫌いじゃないが…」


 そのまま何も言わず、
 ウルーは欠伸した。


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