夏の日差しと狼のいろ。


 「しばらくの間、
 ありがとうございました!」



 早朝5時ごろ、
 ツキはゴンドラの上で
 ぺこりとお辞儀していた。


 頭痛もすっかりおさまり、
 すっきりしている。


 ウルーも元気になったようで
 ゴンドラの上でミリシアに
 ツキと一緒にお辞儀していた。


 「いいのよ、私も楽しかったもの」


 ミリシアはにこりと微笑み、
 朝もやの中に立っていた。



 「アルちゃんはやっぱり
  来てくれないですね」

 「本当に、あの子ったら」


 ツキが残念そうに言うと
 ミリシアはやれやれと首を振る。



 



 「それじゃあ、そろそろ」

 ツキはもう一度会釈すると
 ウルーに合図した。


 これはミリシアに借りた
 ゴンドラなので、

 ウルーが漕ぐからだ。



 ウルーは頷き、オールに
 手をかける。


 「ではー、またいつか!」


 ゴンドラが動きだしたー…







 「ちょっと待ってください!」




 


 「!?」


 少しツンとした、聞き覚えの
 ある声が、響いた。




 「アル、ちゃん?」

 アルだった。

 旅装に身をつつみ、腰に手をあて
 長い桃色の髪をゆらして。



 何故か得意げに言う。





 「ツキさんにウルー様は
  任せられません!


  特別に付いて行ってあげます」


 「アルちゃん…」



 ミリシアは再び
 やれやれと微笑し「行くと思ったわ」と言った。

 ウルーも薄く笑みをうかべ、

 ツキも微笑んだ。







 ゴンドラが進む。


 朝もやの中ミリシアが手を振る。




 三人を乗せたゴンドラは
 次に向かって進んでいったー…






      第二章、完>>



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