夏の日差しと狼のいろ。
「アルちゃんってば…もう」
人の話しを聞かないんだから、と
続けてからため息をつく。
アルが向こうにわたって
しまったので
今度はウルーに言おうと
ウルーを振り向いた。
が。
ザンッ!
「あーーーッ!もう!ウルー!」
ウルーも同じく
高く飛び上がって、
いとも簡単に向こうに
着地していってしまった。
一人ゴンドラに
取り残されたツキは
思いっ切り叫んだ。
「二人とも…
人の話しを聞きなさーいッ!!」
その声にウルーとアルが
驚き、振り向く。
そしてウルーが大きく叫ぶように
答えてくれた。
『ツキ!確か、魔法が
いくらか使えるように
なったんじゃなかったか?』
ウルーの言葉に、
ぴーんとツキは思い出す。
あの小箱を手に入れてから
一部、魔法を取り戻したのを
思い出したのだ。
ツキの力、というのは
魔法でもあった。
今意識して使える魔法は
二つ。
水の中で呼吸する魔法と
一時的に氷で羽をつくる魔法。
(氷の羽…なら!)
ツキはネックレスをにぎりしめ
目をつむった。
意識を集中させ、
頭の中に、氷と光を想像する。
「えいっ!」
ツキが叫ぶと、
氷の羽が背中に現れた。
「やった!成功!」
そう言って飛び上がり
ぎこちなくしながら
ふわふわと向こう岸にわたる。
『やれやれ、まったくツキさんは』
ついた瞬間、アルが
やれやれと首を振る。
ウルーはすでに人間に戻っていて
放っていって悪かった、と
言ってくれた。
「…じゃ、すすもっか…」
暗い森。
ツキたちはおそるおそる進んだ。
しかし、入ってすぐー…
ガサリ、と近くの茂道が揺れた。