夏の日差しと狼のいろ。




 キィィィン…



 「!!」


 一瞬の間に、ツキの右頬から
 血がつたった。


 「ツキ!?」

 「ツキさん!!」


 二人の叫びにようやく
 ハッとし、下を見る。


 そこには地面に突き刺さった
 槍があった。



 これが顔をかすめたらしい。



 「な…なに…?」


 ツキは痛む頬をおさえ、
 後ずさりながらそれが

 飛んできた場所を見た。



 しかし、さっきまで
 音をたてていた茂道は
 もう静まり返っている。



 ツキは黙り込み、
 頬の血を拭った。


 傷が結構深かったのか、
 血がたくさん出ていた。



 「大丈夫か…?ツキ」


 ツキは黙って頷くと
 顔をあげた。



 「じゃあ、行きましょうか?」

 アルが言い出した瞬間ー




 キィィィン!


 「!?」


 今度はアル目掛けて
 槍がとんできた。



 間一髪でアルは
 それをひらりとかわす。


 そしてアルはその槍を地面から
 抜き取ると、

 唸るように叫んだ。


 「誰なんですか?
  いい加減に
  姿を見せたらどうなんですか!?」



 辺りが一瞬、しんと
 静まりかえる。




 でもその直後、
 前の空間がぐにゃりと

 歪み、その歪みから

 声が聞こえた。





 「五月蝿い狼だっ?」

 「ちょっと黙ろっかぁ~?
  ボク五月蝿いの嫌いなのぉ」



 少年の声と、少女の声。



 次の瞬間
 歪みから人影があらわれた。



 「「狼は皆殺しだ!」」

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