夏の日差しと狼のいろ。


 「…ぁああああ…ッ!」


 手首に、槍が刺さっていた。


 ツキは悲鳴をあげ、
 痛みにのたうちまわる。


 「一匹、しとめたーぁっ♪」



 キャハ、と無邪気に少女は笑い
 槍を引き抜いた。



 「手首…血がいっぱい出るんだよぉ」


 ツキはいつの日か、
 銃で撃たれた時の痛みを思い出す。


 その時よりも、痛くて、
 血が出ていた。



 少女はくすりと笑い、
 しゃがみ込む。


 「死ぬ前に教えたあげる
  ボクの名前は、ラルズ」




 ラルズはふわりと飛び上がると
 手を振った。




 「もう一匹の狼…仕留めちゃお!」


 痛みの中、向こうを向くと
 銀色の狼と少年が互角に闘っている。



 アルは…
 アルは、誰にも襲われず
 呆然としていた。



 アルは、猫だから?


 ツキは痛む腕を引きずり、
 起き上がった。



 「ウ…ル…ッ…」



 背後から迫る、ラルズに
 ウルーは気づいていない。



 ウルーが、危ない。




 作戦なのか、少年の口は
 ニィっと笑っていた。



 それなのに声は掠れて出ない。



 「「もーらい」」



 双子が同時にニィと笑った。



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