夏の日差しと狼のいろ。
ードンッ
何かが飛ぶ音がした。
ツキは反射的に
目をつむってしまった。
しかし目を開けてから
何か様子が違うことに気がつく。
飛んでいったのはウルーじゃなくて、
少年だった。
ツキははっとして
素早くウルーに駆け寄り、尋ねた。
「ウルー!?大丈夫?」
「ああ…でも」
ウルーの見つめる先には。
「アル…ちゃん?」
体からいつかみたいに
黒い影の手のようなものを出し、
笑っていた。
そのアルはいつもと違い、
刺々しい雰囲気をまとっていて
近寄れる気がしない。
ツキたちがじっとしていると
アルがこっちを振り向いた。
一瞬だけ、いつもみたいに
笑顔を浮かべて。
「ツキさん…テイクオーバー、って
しって…ます…か?」
何かを堪えるように、
アルは途切れ途切れにいう。
「夢で…」
ツキは夢のことを思い出しながら
答えた。
確か夢の中の
もう一人の"ジブン"が言っていた。
"くれぐれもテイクオーバーしないように"
それを聞き、アルが微笑む。
「なら…いい、です…
テイクオーバーは…」
アルが話し出す。
"テイクオーバーは、自分の力を
限界まで出し切るもの。
力を操りきれないものが
使うと、理性を失い暴走。
最後はやがて 死 あるのみ"
ツキは呆然とその話を聞いた。
さっきまでは
あんなに楽しく話してたのに。
幸せだったのに。
「さぁ…行って…くださ…い」
アルは決意をこめたように
微笑んだ。
それを最後に、
アルは黒い光に包まれ、
見えなくなった。