夏の日差しと狼のいろ。


アルSide*




 目の前で、ツキさんが刺された。


 目の前で、ウルー様と
 兎が闘っている。


 しかし、自分には
 兎達は見向きもしない。


 アルはただ呆然と
 二人の姿を見つめて、

 声も出せなかった。



 別に、戦いに
 なれてないわけじゃない。


 むしろ慣れているくらいだ。



 でも、はじめてできた"仲間"が
 傷つく姿に
 何をしたらいいか、わからなかった。



 うちに、ツキさんがぐったりと
 倒れながら、何か口を
 ぱくぱくと動かしているのに

 気がつき、その方向を見た。





 ウルー様に飛び掛かろうとする、
 少女。


 にやりと笑う少年。





 その瞬間、ぷつんと
 アルの中で何かがはじけた。





< 224 / 376 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop