夏の日差しと狼のいろ。


 「やだ!ウルーやめて!」

 ツキは悲鳴を上げたが、
 ウルーには聞こえていなかった。



 どんなに叫んでも。
 どんなに願っても…

 ウルーには、聞こえない…


 ツキはそれでも叫び続けた。



 「ウルー!ウルーっ!
  理性を取り戻してよ!」








 『狼は慣れてないんだぁ?』


 不意に声が聞こえ、
 ツキはぴたりと振り向いた。



 そこで双子がにぃと笑った。

 (嘘…!)



 ーどうやら理性が
  ある程度戻ったみたいだ。



 きっと、何度もテイクオーバーを
 使ったことがあるのだろう。




 ツキは目に涙を浮かべた。


 ウルーの体はどんどん壊れ、
 それでもウルーはとまらない。



 『この狼は死ぬぞ』



 「…死……ぬ…?」











 その言葉で
 ツキの中の、何かが弾けた。
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