夏の日差しと狼のいろ。



『子兎か?』


はっ、はっ、と息を吐きながら
1番大きな狼が言った。


そして馬鹿にしたように
尻尾をふりながら

仲間に合図すると
狼達は一斉に二人に飛び掛かった。



ー俺ら、死ぬんだ…!










「ぐぅっ!」


うめき声は
二人のものではなくー…



大好きな、大好きな父の声だった。

思い切り狼達に
投げ飛ばされ、腕をかみちぎられ
父は近くの木に激突した。


そして父は
大きく咳込み、血を吐き
ぐったりと倒れ伏した。



『潰れた蛙のように、無様だ』


狼達は嘲笑すると
行くぞとばかりにまた尻尾を振り

嵐のように、しかししなやかに
足を動かし、去っていった。



残された二人は
父に駆け寄る。
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