夏の日差しと狼のいろ。
ウルーSide▼
「ツキ!」
ツキが、川に落ちた。
それも水面が凍っている
その中に、だ。
表面の氷を割らないかぎり
ツキは息ができないはずだ。
ウルーはなんとかしようと
したが、もう
ツキがどこに流されてしまったのかわからない。
ウルーはどうしようなくなり
しゃがみ込んだ。
「………最悪だ」
そう呟き、
ウルーは情けなくなって
顔を伏せた。
…俺はまた、ツキを
守れなかったのか?
いつも、自分を
助けてくれるツキ。
ウルーはさらに悲しく
そして自分に怒りがわいた。
しかしウルーがうなだれていると
アルがぴょいっと
ウルーのローブから
飛び出た。
『ウルー様、見てください』
「…何だ」
アルが氷のまわりを
くるくる回り、
尻尾で割れた部分を指した。
『わかりますか?
これは、
自然に割れたんじゃありません』
ウルーははっとして
目を見張った。
氷の割れた断面は
熱で溶かしたみたいになっていて
綺麗に丸く割れていた。
「…本当だな、魔法か?」
言ってから、
そっと、断面をなぞる。
…まだ、あたたかい。
『そうです。何者かが
ツキさんを落としたんでしょう』
アルはちょっと水に
濡れた真っ白い毛を
逆立て、歩き出した。
『じっとしていても
犯人は見つかりませんよ?』
ウルーは頷くと
歩き出した。
…絶対に、ツキを助ける。