夏の日差しと狼のいろ。
ツキSide>>
(…あれ…?私…)
ツキはまた、真っ暗な闇の中に
寝転がっていた。
…どうやらいつもの
夢みたいだ。
ひどく、寒い。
ツキは冷えた体を震わせながら
起き上がった。
『やぁ、主』
暗闇から、すぅっと
テイクオーバーの時の姿の"自分"が
溶け出るように現れる。
「…私、どうなったの?」
ツキは震えながら、尋ねた。
もう一人の自分は
なさけなそうに笑い、
ちょっと心配するような
色を瞳に浮かべた。
『主は、死んでない
でも危険がすぐそばにある』
「危険?」
ツキは尋ねたが
まるで聞こえなかったかのように
もう一人の自分は
違うことを言った。
『主、寒いだろう?
早く向こうに戻らないと
死んでしまうよ』
ツキはぞくりと
震えた。
早く、夢から
覚めないと死んでしまう、
ということだろうか?
ツキが恐怖と寒さで震えていると
ぐにゃりと視界が歪み
もう一人の自分が
見えなくなった。
『気をつけて主…
危険がせまってる……』
そんな声を最後に、
景色はぱっと消えた。