夏の日差しと狼のいろ。


「…だ、誰ですか」


アルは若干、警戒を浮かべ、
ツキに向かってそう言った。



ツキはどきんとした。


(誰って…!私がわからないの?)



しかしそれは間違いだと
すぐに気がついた。



「まさか、ツキさん?」


アルがぽかんとして
そんなことを言ったのだ。


ツキは必死に頷いた。



『そう!びっくりしたよ』



ほっとしたのもつかの間、
ツキはようやく異変に
気がついた。





声は氷の中を反響するように
凛と響き、


体が真っ白とも、氷色とも
言える狼になっていたのだ。



毛の一本一本が
氷みたいに冷たく、

冷気を発している。




『あれ!?わ、私どうなって…』




ツキはパニックになって
ぐるぐる回り、

ベッドから飛び降りて
アルの前に行った。



自分の体が
人間姿のアルを乗せられるくらい
悠々とした大きさなのがわかる。



アルはそっとツキに
近寄った。





「ツキさん、ついに
雪狼の姿になれたんですね!」



そう、叫んだ。





これこそが雪狼の姿ー…

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