夏の日差しと狼のいろ。
ごうごうと耳もとで
風がなる。
自分の速さにツキは
驚いていた。
もしかしてウルーよりも
速く走れているのではないか、
とさえ思う。
アルが必死に背中に
捕まっていた。
それくらい速いということだ。
ぐんぐんと雪の丘を走っていく。
人間のときよりも
鼻がきくし、遠くまで見渡せる。
だから、点々と続く、
二匹の狼の足跡を見つけるのに
時間はかからなかった。
おそらく歩いているのだろう。
『二人は歩いてるみたい
追いつける、絶対!』
ツキは叫んだ。
『私が凍える前に
追いついてくださいよね…』
アルはそう切り返し
尻尾でパシリとツキを叩いた。
ツキは飛ぶように駆けて行った。