夏の日差しと狼のいろ。
『………。』


アルはそれを無視して
ツンとしている。


でも、寒くて毛が逆立っている。



ツキは心の中で笑いながら
アルにこう言った。



『寒いから、近くに来てほしいなー?』



するとアルはちらっと
こっちを見て、立ち上がると

こっちへゆっくりと歩いてきた。


『ま、まぁ、ツキさんが寒いなら
しょうがないですね…』



そういうと
『私は全然寒くないですけどね』と

言いながらツキの傍に丸くなった。










それからしばらく
二人はそこに横になっていたが


不意に、サンドルが
身じろぎし、


ツキははっと振り向いた。





赤い瞳が憎々しげに
こっちを睨みつけている。



それからサンドルは
歯をむいて唸った。



『まさか小娘!
テメェが狼になれたとはな!!!』



今にも飛びかかってきそうだが
無理なのがツキにはわかった。




肩からはまだ血が流れ、
白い雪を真っ赤に染めている。





ツキは冷静に答えた。



『さっき、成れるようになったの』



横でアルが毛を逆立てて続ける。


『ツキさんを侮った、
アンタが馬鹿なんですよ』




途端にサンドルは
もっと激しく唸りながら

目に怒りをたたえた。


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