夏の日差しと狼のいろ。

『……ッ』




ツキは体を丸めて唸った。

お腹のあたりが焼けるように痛い。



ツキは霞む目で
自分のお腹を見た。







ー腹が酷く、大きく裂けて
血が吹き出している。




ツキはそれを見て余計に痛くなり

雪の上で弱々しくもがいた。





「ツキさん!ツキさんっ」



アルは人間の姿に戻り
叫びながらこっちへ駆け寄った。



アルが恐怖をうかべた
琥珀色の瞳でツキを見つめる。




ツキは血が自分の
真っ白な毛にじわじわと
染み込むのを感じた。



アルはそれを見て慌て叫んだ。



「しっかりしてください!」




ツキは裂けた腹から
血が流れるのと痛みとで


だいぶ意識が失せていたが

なんとかサンドルを見た。




『…な、に…した……の…』





途切れ途切れに言うと
同じく肩からの出血で


だいぶ血の気が失せたサンドルは

勝ち誇ったように答えた。



『いったじゃねぇか。
それぞれの族は、目を使った
技を使えるってな』




サンドルはもとに戻った
赤色の瞳を揺らした。


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