夏の日差しと狼のいろ。
ー…
真っ暗…
いつもの夢の闇だった。
ツキは起き上がると
あたりを見渡した。
目当ての姿がすぐ見つかり
ホッとする。
『よ、来たんだ』
もう一人の自分は
素っ気なく言うと手をひらひら振った。
ツキはゆっくりと近づいた。
狼の姿で来たのは初めてだ。
『お前さ…こんなところで
ぼぅっとしてていいの?』
ツキはぴたりと足を止めた。
そして冷ややかにこちらを見る
"自分"を見つめた。
『で…わかってる…わかってるけど』
ツキは悔しくなって俯いた。
すべての力を取り戻せば、きっと。
ツキは期待を込めた瞳で
"自分"をみた。
しかし顔をついと反らされた。
そして目だけをちらりと
向けられ、自分は言った。
『すぐもらえるさ。
でもそれは私じゃない。』
その言葉を最後に
闇はぐにゃりと歪んで消えた。