夏の日差しと狼のいろ。


視界が滲んだ。


ツキは俯くとそこにしゃがみ込んだ。



どうしたらいいの?



ツキが俯いていると
ふと何かの気配がしてツキは
顔をあげた。



「…っ、ウルー!?」



前に立っていたのは
ずっとまっていたー…
ウルーの姿だった、なのに。



ウルーじゃない気がした。



相変わらず長い前髪の下の
漆黒の瞳からは
何の表情も読み取れない。



「ねぇ…ウルー、なの?」



ツキは涙を拭いて、
おそるおそる話かけた。



しかしウルーは答えなかった。





代わりに顔をあげて
こちらを見た。


濁っていて虚ろな漆黒の瞳が
こっちを見たと思った次の瞬間、


瞳が赤になって
ウルーはにやりと笑った。




まるでサンドルみたいにー…








< 343 / 376 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop