夏の日差しと狼のいろ。


ツキは呼ばれたほうに飛び込んだ。

サンドルの振るわれた前足が
空をきる。


ツキははぁはぁと肩で息をしながら
顔をあげた。


リルが心配そうに
こちらを見ていた。


「…大丈夫…?」


ツキはなんとか頷き
助け出した子供をリルに預けた。


「私、行かなくちゃ。
守らなくちゃ…ここを…ウルーを…」



リルは青い瞳を心配そうに揺らして
首を振った。


「…だめ。姫、怪我してる…」



え?とツキはリルの指さす
自分の腕を見た。



いつの間に怪我をしたのか
切り傷が出来ていて、

血が流れている。



ツキはさっと腕を隠し
リルに微笑みかけた。



「このくらい大丈夫!」


ツキが言った瞬間、
頭上の屋根から誰かが降りてきた。



ー…イクアくん!



久しぶりに見るイクアに
ツキは驚いて、それから笑った。


相変わらずの金髪が
青い瞳とよくあっている。


「ツキ!やめとけよ!
ツキに死なれたら俺らが困るぜ?」


ツキは首を振った。




「行かなくちゃならないの!」



ツキはそれだけ言うと
二人の止める声を無視して

路地裏から飛び出した。



< 347 / 376 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop