夏の日差しと狼のいろ。


無理に体を引きずって
狼の傍に寄る。



狼の瞳は混乱したように
さ迷い、ツキをとらえた。




『ク…ソ…小娘……』



悔しそうにサンドルは
唸り、ツキを睨むとかくりと

頭を倒した。




サンドルは、死んだのだ。



ツキは不安になった。



「ウルー…?」



サンドルに取り付かれたウルーは
どうなったのだろう。



ツキはそっと銀色の狼に触れた。



その瞬間、
その体はふわりと人間の…


ウルーの姿に戻った。





ツキはウルーの横に
横たわった。


綺麗で幻想的なウルーの
横顔はいつもと変わらず

優しげで、眠っているみたいで。




ツキは体中が痛くて
でも嬉しくて微笑んだ。



早く…早く目覚めてよウルー…



でないと私、死んじゃうよ…





ツキはそのまま、目をつむった。

遠くでアルや、リル、イクアの
名前を呼ぶ声が聞こえた。



きらきら辺りに
氷のカケラが飛び散るなか、

ツキは意識を手放した。


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