夏の日差しと狼のいろ。


水面が遠くなっていき
息が苦しくなってツキは喘いだ。


死にたくない!


体から怪我は消えたが
体は鉛のように重く、

上手く動かすことができない。



ツキはもがくのをやめて
遠くなった水面を眺めた。



口を開くとあぶくが水面に
ふわふわ上っていった。

ツキは目を閉じた。



(もう、開けられないよ…)


ツキは目を閉じたまま
手にぎゅっと力を込めた。




「ウルー……」


ツキはぽつりと呟き、
次の瞬間口に水が流れこんでくるのも
無視して叫んだ。



「ウルーー!!助けて…助けてっ!」



ツキは叫んで、水面に手を伸ばす。


その時、光がさした。




『ツキ!目を覚ませ!』


ウルーの声が確かに聞こえた。



ツキは閉じていた瞳を
開こうとして、
声のしたところを探そうとした。


しかし、力は入らなかった。



「ウルー…ウルー…っ」


ツキは叫んだ。


『ツキ!目を開けろ!』





ツキは無理矢理瞳を開いた。



次の瞬間、水が消え
ツキの目の前には
涙を流したウルーの驚いた顔があった。





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