夏の日差しと狼のいろ。


「…悪かった…」

ウルーはそう言って
漆黒の瞳をつらそうに細めた。


辛そうな表情に、
胸がずきんとする。


そして首をかぶり振った。



「いいの、ウルー…
ウルーが助かったから…だからね」


ツキが続けようとするのを
ウルーは首を振り
ツキの唇にそっと指をおき
それを止めた。



ツキははっとしたように
ウルーを見る。


「俺が注意していたら
ツキは川にも落ちなかった。それに」


ウルーはツキの唇においた
指をそっとなぞるように動かす。


「ツキをキズつけた…」



ツキがサンドルにされたことを
言っているのだと

すぐにわかった。



思い出すだけで嫌悪が込み上げ
悔しさも込み上げる。



ツキが目を逸らすと
ウルーはツキに顔を近づけた。



「俺は全然ツキを守れていない。」


ウルーの綺麗な整った顔が
近くて、ツキは鼓動がはやく
なるのを感じた。




ツキはおそるおそる
ウルーに視線をあわせる。



目があった瞬間
ウルーがさらに顔を近づけた。



顔に吐息がかかる。


ツキが緊張して固まっていると
ウルーが言った。



「…消毒、してもいいか?」



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