夏の日差しと狼のいろ。


勢いよく、扉が開いた。


「ツキさん…!」

アルは泣きそうな顔で
一瞬こちらを見てからすぐ俯き

つかつか歩いてきた。


無理矢理ウルーよりツキの
傍に座る。


少し、ウルーが不満げに
耳を動かしたがアルは
気づいていない様子だった。


「ア、アルちゃん…?」



ツキは、おそるおそる
アルに触れた。



「アルちゃん…っ!?」


ツキはびっくりしてアルを見た。


「~ッ……」


顔を上げたアルは
怒ったような表情のまま、

ボロボロ涙を流していたからだ。



ツキはおろおろして
アルを見つめた。


さっきまで不満そうにしていた
ウルーもきょとんとしている。



「ツキさんのばか…!!
一人で無茶しないでください!

私を放っておいて
次見たときには死にかけてたなんて」



アルは俯いたまま
叫ぶように言い続けた。



「ツキさんのばか!ばか!
次こんなことしたら
許さないんですからね…」



子供みたいに泣きじゃくる
その姿は年相応に見えて、
いつもの大人っぽく振る舞う


アルとは全然違った。




ツキは、そっとアルを抱きしめた。




「ごめんね…アルちゃん…」



横からウルーも寄ってきて
ポンポンとアルの頭を撫でた。




「ぐすっ…っく…」


アルはツキから体を離し、
ウルーの手をさっと払うと
乱暴に涙を拭う。



そして立ち上がった。



「もうっ!わかればいいんです!」


アルはツンといつもみたいに
腰に手をあて頭を高くあげ
そっぽ向いた。




「いつものアルちゃんだね!」


ツキはそう言って笑った。
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