夏の日差しと狼のいろ。
止まったら殺される。そんな恐怖から少女は一心不乱に走った。
肩を何かがかすめ、直後に痛みが広がる。
それでも少女は走った。
狼の血が混じっているのもあってか走るのは速く、得意だった。
それでも銃は後ろから少女を狙う。
―ドンッ
鈍い銃声とともに少女は投げ出されたように転んだ。
足からは激しい痛みが伝わった。
「あたったぞ!捕えろ!!」
そんな声が聞こえてきた。
逃げようとしても撃たれた右足は血がどくどくでるだけで動かなかった。
よく見れば体のあちこちから銃をかすめ、出血していた。
少女は青い顔でふらりとその場に、うつ伏せで倒れた。
大人達の足音が迫る。
少女は獣の耳をぴくりと動かした。
もうすぐ傍まで追いつかれてしまったようだ。
(私、殺されちゃうんだ)
少女は霞む意識のなかぼんやりと考えた。