夏の日差しと狼のいろ。


やがて辺りは静かになった。



少女は動けずに地面にねっころがっていた。


もはや、ほとんど意識はなかった。


けれど突然誰かが少女の頭をぐいっ、と持ち上げた。


「大丈夫か?」


誰が少女に問いかけた。

少女は目だけを声のほうへ、向けた。


 「……!」



そこに居たのは見た目が20歳くらいの美しい青年だった。


髪は長くてバサバサだが綺麗な黒みのかかった銀色だった。

目はそこの見えない漆黒。

なにより少女が驚かされたのは頭に鎮座した、銀色の獣の耳と尻尾だった。


口からは鋭い歯がちらりと覗いた。



「大丈夫か?」


男は繰り返した。


「大丈夫…。です。」



大丈夫ではなかったが少女はそう答えた。



男は少女の顔から右足に視線をうつした。



「…ひどい傷だな」


そう呟くと、首にまいていた布きれをとり、少女の足にくるくると巻き付けつけた。
< 7 / 376 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop