夏の日差しと狼のいろ。
やがて辺りは静かになった。
少女は動けずに地面にねっころがっていた。
もはや、ほとんど意識はなかった。
けれど突然誰かが少女の頭をぐいっ、と持ち上げた。
「大丈夫か?」
誰が少女に問いかけた。
少女は目だけを声のほうへ、向けた。
「……!」
そこに居たのは見た目が20歳くらいの美しい青年だった。
髪は長くてバサバサだが綺麗な黒みのかかった銀色だった。
目はそこの見えない漆黒。
なにより少女が驚かされたのは頭に鎮座した、銀色の獣の耳と尻尾だった。
口からは鋭い歯がちらりと覗いた。
「大丈夫か?」
男は繰り返した。
「大丈夫…。です。」
大丈夫ではなかったが少女はそう答えた。
男は少女の顔から右足に視線をうつした。
「…ひどい傷だな」
そう呟くと、首にまいていた布きれをとり、少女の足にくるくると巻き付けつけた。