夏の日差しと狼のいろ。
そして顔をあげた瞬間、男が思いっきりツキを殴り飛ばした。
見た目通り男の力は強い。
ツキが呻いていると、次に男はお腹を何度も蹴りつけてきた。
きゅっと体を丸めてツキは呻いた。
「う…あぅ…」
苦しさと痛みでツキの頬を涙がつたう。
それでも構わず、男はツキの首輪を引っ張り持ち上げた。
「これくらいですむと思うなよ」
恐怖が立ち込めてきたがツキはキッと男を睨み返した。
男はカッとしたように怒鳴る。
「なんだその目は!」
そしてツキをまた、地面にたたきつけた。
頭を思い切り打ち、意識がとびそうになる。
額から流れた血が目に入る。
片目をつむった状態でもツキは男を睨み続けた。
その度に男はツキを殴り飛ばし、蹴った。
体じゅうぼろぼろであちこちから血が出てきた。
たぶん、殺される。
それでもツキは負けたくなかった。
恐怖のほかに何かが沸き上がっていた。
“怖い”が“負けたくない” に変わった。
生きるんだ。
ウルーが助けてくれた命で。大切な命で!