夏の日差しと狼のいろ。
「どうしたよ?」
男は楽しそうに笑う。
そしてーーガン、っと鈍い音が響いた。
「うぅっ…っ」
男がツキの片方の手にナイフを突き刺した。
ツキの手から血が滴る。
「いたい…いたいよ…」
ツキは 恐怖だか痛みだかよくわからない感情にのまれた。
ウルーがこれないのなら私は死んでしまう。きっと。
ツキは完全に抵抗をやめた。
走馬灯のようにウルーと過ごした日々がよみがえる。
少し前まで幸せだった。
ろくでもない人生だったけど、これだけは確かに幸せだった。
男がナイフを振り上げる。
世話してくれたシルクの顔がよみがえった。
ナイフが迫る。
ツキは心の中で皆に謝った。
ごめんね…みんな…