夏の日差しと狼のいろ。
「痛っ…」
傷は深く、足がえぐれていた。
布きれのおかげでしだいに出血はおさまっていった。
くらくらする頭もすこし楽になった。
それを見て、男が口をひらく。
「…何してたんだ?」
少女はびくっ、と身体を震わせた。
顔をあげられない。
そもそもこの男が誰なのかわからなかった。
意識が戻るにつれ、気がついたが少女の周りにはさっきの大人達が
引き裂かれた死体になって転がっていたのだ。
(きっとこの人は強いんだ。)
そう思った。
だから男の顔を見る目に恐怖の色が浮かんでいたのだろう。
男はあわてたように表情を緩めた。
「そんなに怯えなくてもいい、お前に危害は加えない」
そう、言った。
少女は耳をぴくりと動かした。嘘ではないようにきこえた。
そして口を開いた。
「逃げ出して、きた…の」
小さな声でそういうと、男は少女がやってきた道を見た。
「あそこから逃げてきたのか」
そういうと一人納得し、少女の頭をなでた。