夏の日差しと狼のいろ。
狼はたしっ、たしっと足音をたてて、ツキの前へ来た。
そして綺麗な瞳で見詰める。
「ウルー…」
ツキは体中痛むが、震える声で狼によびかけた。
白銀に輝く狼は、ついと横をむいたかと思うと、
ザン、と飛び上がり、ツキを縛っていた縄をかみちぎった。
ツキはどさりと地面に崩れた。
『大丈夫か?』
ツキは顔をあげた。
白銀の狼が喋ったからだ。
やはり間違いなくウルーだ。ツキは確信した。
でも声は少しいつもとちがう。
狼の姿だからだろう。
ツキはそう考えるともう一度きいた。
「ウルーだよね?」
狼はちらりとこちらを向くが何も答えてくれない。
ツキは無言で狼を見つめた。
しばらくすると、白銀の狼は尻尾をふさりと動かして、『ああ』と答えた。
ツキは気がつくと涙を流していた。