夏の日差しと狼のいろ。


もう恐怖はなかった。

男の目がひどく優しかったからだ。

そして男がたずねてきた。


「俺はウルーだ、おまえは?」



その質問に対して、少女は言葉に詰まった。


―名前なんてないからだ。



少女が暗い顔をして、うつむくと、ウルーは理解したようだった。


「嫌なことを聞いたな…名前がないのか」


ウルーの言葉に、少女は頷いた。



「俺でよければ…つけてやろうか?」



男が少女を見つめ、言った。


(名前を…?)


少女は驚いた顔をしてウルーを見た。


ウルーは苦笑いしていた。


少女は一瞬ためらい、

「…つけて。名前。」



小さく呟くように返事をした。



ウルーはこくっと頷いた。


そして少し考えるような素振りで空を見上げると、


「……ツキなんてどうだ」


(ツキ…)


少女の胸に何か温かい感情がこみあげた。



 「うん…うんっ、ありがと…」


 ツキは嬉しそうに微笑んだ。
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