神様修行はじめます! 其の二
「永久よ、礼なら我が子に言え」


絹糸が、子猫と一緒に門川君の枕元に近づいた。


「もう大丈夫そうじゃのぉ」

「ああ、心配をかけた。君が治療を?」

「みー、みー」

「・・・ありがとう」


門川君が微笑んで、子猫の頭をクルリと撫でた。


「しま子も、すまなかった。僕を運んでくれたんだろう?」

「うあぁ~」

「君にも迷惑をかけた。セバスチャン」

「めっそうもございません。永久様」

「ありがとう、岩さん」

「ジュエ・・・いえ、もうそれはいいですわ」


お岩さんが、門川君の手を両手でギュッと握り締めた。


「わたくしが、この身に変えてもお守りします」

「本当にありがとう。岩さん」



門川君は全員に目をあわせ、丁寧にお礼を言った。


あたしひとりにだけ、声を掛けなかった。


あたしは、空気のように完全に存在を無視された。


「お前など見たくも無い」とでも言うように。


存在そのものを否定される。


それが、これほどまでに辛く悲しいなんて・・・。

< 148 / 654 >

この作品をシェア

pagetop