神様修行はじめます! 其の二
あ・・・。

あたしはハッと気付いた。

そうだ、思い出した。

絹糸と初めて夜の庭を見た時。

あの時の会話の中に出てきた人。


あれって門川君のお父さんの事だったんだ・・・。


「宝石を編んだ絹糸のようだと、いつも言っておったわ」



いつの間にか・・・

我を『絹糸』と呼ぶようになり。

我もそれを受け入れた。


永守は立派に成長し、我の手を離れた。

門川の当主となり、子を成した。

小さく頼りなげな赤子は、大人になった。


それでも、我の背を撫でる事だけは変わらなかった。

小さかった手が、大きくなり、すっかりとたくましくなっても。

それだけは変わらなかった。


何かあると我の背を撫でた。

嬉しい時、悲しい時、辛いとき・・・

そう・・・あの日も・・・


生きては帰れぬ戦いへ赴く日も・・・。

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