神様修行はじめます! 其の二
彼の両腕が、あたしの体を包み込む。

そして彼の頬が、あたしの髪に優しく触れる。

あたしは、彼の胸に抱かれて彼の香りに包まれた。


白い香り。

清々しい、純粋な、穢れのない香り。

冷たいほどに澄み渡る、透き通った風。


切ない・・・切ないよ。

こんなにも幸せで・・・でも、もどかしい。


どうして気持ちが伝わらないの?

こんなに近くに居るのに。

こんなに・・・思いがはち切れそうなのに。


「門川君・・・好きだよ」

「あぁ、僕も君が好きだよ」

「違うっ。違うよっ」


彼の胸の中で、あたしは駄々っ子のように顔を横に振る。

違うの。その『好き』じゃない。

あたしは・・・あたしの好きは・・・。


「天内君・・・なぜ泣くんだい?」


両目に涙が滲んで、まつ毛が濡れる。

今にも零れ落ちそう。


「・・・泣きたいくらい、好きだから」
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