神様修行はじめます! 其の二
あの、侘しい庵に隠されていたお兄さん。

秋風さんに守られていたはずなのに。

お兄さんのミイラを・・・


奥方が召喚したの!?


門川君は片ヒザ立ったまま、我を忘れたようにお兄さんのミイラを見続けている。

ミイラは、目の無い両目で門川君を見返す。

兄弟がこの場で見詰め合った。


「我が子、永継よ・・・」

奥方が、奇妙に優しげな声を出した。


「永久がの、おぬしの当主の座が欲しいと言うておる」


ぎちぎち・・・。

きしむ音。不気味な気配。

ミイラが・・・動き始めた。

首が微妙に、かくんと動く。


「当主の座が、欲しくて欲しくてたまらぬそうじゃ」


かくん、かくり。

ぎち、ぎち、ぎち。

糸がもつれた操り人形のように、全身がぎこちなく動く。


ミイラは、おぼつかない動きで立ち上がった。

呆けたままの表情の門川君は、逆にヘタリとその場に崩れた。

あたしは目の前の光景に、もう、息をするだけでやっとだ。


「おぬしの座を奪うそうじゃ。・・・どうする? 永継よ」

『・・・渡さぬ』


ミイラの声。

全身から響いてくるような、篭もった暗い音。

『渡さぬ。渡さぬ。決して渡さぬ』
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