神様修行はじめます! 其の二
窪んだ両目の奥に、小さな光が宿った。

ほの暗い炎のような揺らめき。


『永久には・・・決して渡すものか』


暗い声が空間に響き渡る。

その篭もった音の中に確かに込められた、ひとつの感情。

・・・恨み。

間違いなくその声には、根深い恨みの念が息づいていた。


「それは困ったのぉ。永久よ、お前に当主の座を譲る気は無いそうじゃ」

「あ・・・・・」

「さて、どうする?」


声も出せない門川君を見ながら笑う、紅い唇。

人形のような真っ白な顔。

一重の鋭い目。

ふわりと動く扇子の風。


「久方ぶりの、仲むつまじき兄弟の逢瀬じゃ。ゆるりと話し合うがよい」


優しげで残酷な言葉が、奥方から放たれた。


『永久・・・』


ぴくんっ!

名を呼ばれ、門川君の体が反応する。


「あに・・・うえ・・・?」

『奪うと言うのか?』

「あに、うえ・・・」

『お前は我には持てぬ全てを持ちながら、なお、我から奪うと言うか?』

「あにうえ・・・」

『・・・憎い』


門川君の体が、びくんと跳ねた。


『憎んでも憎んでも、まだ足りぬ』

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